ヨガを始めたのは8年ほど前になる。
40代半ばを過ぎた頃のこと。デスクワークで座りっぱなしの仕事を5年ほど続けていたのだが、ある朝腰に激痛が走って、動けなくなった。病院の診断は椎間板ヘルニアだった。
症状は2週間ほどで収まり、仕事にも復帰したが、それから腰痛とのお付き合いが始まった。
今から考えると、当時の自分はなんと、自分の体について無知だったことかと思う。
慢性的な肩こりや首回りの凝り、目の疲れ、座骨神経痛、高血圧と、痛みや不調のオンパレードだったのに、そんなものかと思って何も対処していなかった。
犬の散歩の帰り道、太ももの裏側が痛くて歩けなくなったこともある。寝ているとき、背中の痛みで体の向きが変えられなくなったことも何度もある。いつもどこかが痛くて、あまりにも生活に支障があるので、段々何とかしないといかんと思う様になった。そこで、手始めに「もみ処」という小さなお店に行ってみた。そこでは若い(というか子供っぽい)女性が30分くらい優しくうつぶせの背中をさすったりしてくれたが、支払いの時に「肩が凝っていらっしゃいます」と宣った。いや…肩が凝っているのは知っています。それを何とかしてくれるのかと思っていました。
とは言わなかったけれど、そこには二度と行かなかった。
カイロプラクティックにも通った。立ったり腰掛けたり、腕を上げたり広げたり、ベッドにあおむけになったり、うつぶせになったり、いろいろな格好をさせられて、たまに羽交い絞めのような感じでボキッ!とやる。
一つ試すたびに「これはどうですか?」「これは?」「これは?」と聞かれる。
そのたびに「うーん…あんまり変わらないですね」と答えると、先生は分厚い本をめくりながらしばし考え込む。何やらよくわからいまま、時間が過ぎる。なんだか行くのが面倒になり、4回でやめた。
中国式の整体院にも通った。一人目の先生には「不通疼痛」という中医の原則を教えてもらった。「(血やリンパが)流れないところに疼痛が生じる」という意味で、これはとても大事な原理だと今でも思っている。教えてもらってよかった。ただ肝心の先生の腕は大したことはなかったらしく、一度施術してもらうとまあ楽になるのだが、すぐ元に戻ってしまう。
二人目の先生に会ったのは自分史上、まさしく運のつきだった。腕はよかったのだが、あくの強い演技派だった。奥さんに逃げられて4人の子持ちという触れ込みで、客の同情を引くのがうまい御仁だった。浅はかな自分は、断れない性格に付け込まれてお金(大金です)を貸してやり、なんだかんだと今に至るまで返してもらえないという地獄を味わったのである。
そんなことから、体の痛みは相変わらずなのだが「××院」に通うことがすっかりトラウマとなってしまったので、しばらくどこにも通うことなく、体の不調をなんとかだましていた。
そして8年前。
仲良くしている友人と鎌倉へ旅行に行こうと計画を立てたが、旅行の直前に、また太ももの付け根が痛くて歩けなくなってしまった。
仕方なく、トラウマを脇に置いて、通勤途中に新しくできた日本人の整体院に行って、「とりあえず歩けるようにして欲しい」とお願いした。そこではいろいろな器具に乗っかって色々な施術を行ってくれた。正直すごく効いたというわけでもなかったが、結果的に痛みは歩けるほどには和らいだ。その先生に「普段の生活でできることは無いでしょうか」と何気なく聞いたら、「そうですね。お風呂とかストレッチとか、ヨガなんかですかね。」と答えてくれた。
ヨガ!それがあったか!
この時、人生で初めて「ヨガ」について考えた。
そうだ、ヨガがあったじゃん。なぜ今までヨガに思い至らなかったのだろう。独特のあの、妙なポーズ。あれをイメージして無意識に「変な人たち」と敬遠していたけど、あのポーズは普通はできない。体が凝っていないからあれができるんだろう。あれができるからには、ヨガには体を柔らかくする効果があるんじゃないか?体が柔らかくなるなら、凝りや痛みもなくなるのではないか?もしかして、ヨガは私を救ってくれるんじゃないか?と瞬時に思ったのである。本当に、私に「ヨガ」という言葉を授けてくれたこの整体院の先生に、心から感謝する。
あとは試すのみ。
先述のトラウマがあるので「ヨガスタジオに通う」という選択肢はハナからなかった。ありがたいことに、同僚に何気なくこの話をしたら、ヨガのDVDを持っていると言って快く貸してくれたので、早速見ながらやってみる。10分ほどの短いもので、かなり古かったが、それでも最初は十分だった。
このDVDは日本のヨガ業界でも相当初期のものだったのだろう。懐かしいレオタード姿の先生は動画の中で、ポーズをとりながらよろけたり、カウントを間違えたりする。でも体は柔かい。伊達にやっとらん、という感じだった。
中でも、両手を床について、片足を真上に上げるポーズ(下を向いた木のポーズというのだろうか)は、中級者向きだとDVDの中の先生が言っていたが、これをやってみたら、腰がポキッ!と鳴って、そのあと腰がすごく楽になるので、入門者の私ではあるが、毎日これをやっていた。
その後、他のDVDを買ってみたりして半年ほど経った頃か。姉が「首が痛いからこれに効くヨガは無い?」と聞いてきたので、ネットで検索したら、「首こり」というサムネのYouTubeの動画がヒットした。
これが、B-lifeのまりこ先生との出会いである。
まりこ先生の動画は当時でもたくさんあって、首、腰、肩、顔、足と、身体の部位の、自分が気になる所それぞれの動画が公開されていた。時間も10分くらいの短いものから、1時間の長編もある。まりこ先生は若いけれど身体についての知識にきちんと裏付けされているので、画面越しのレッスンでも素直に信頼できた。
以来、今日まで朝晩は5分くらい、まりこ先生の動画を見ながらヨガで体をほぐしている。一日のうちで、朝がいちばん体調が悪いことが、この頃ようやくわかった。寝ている間に凝り固まった体をほぐして、気持ちが前向きな時はエンジンをかけるように。疲れが取れずに気分が上がらないときは、優しくいたわるように。長く続けているうちに、どのレッスンがどんな体とメンタルの状態に向いているのか、自ずとわかってその日の体調に合わせてレッスンを選べるようになる。
ヨガは、スポーツとは少し違う。筋力をつけたり、肺活量を増やしたりするためのものではない。毎日の体のメンテナンスである。私にとっては、胃が痛い時に胃腸薬を飲んだり、肩がこったらバンテリンを貼るようなものだ。毎日自分の体を調子よく保つように、藥のかわりにヨガを行っている。
今でも、肩こりはあるし膝の裏がいたくなったり首が固くなったりもする。座り続けていれば、ふくらはぎがパンパンに張ってしまう。毎日の生活が原因だから仕方がない。そんな小さな不調があっても、ヨガが大方の問題は解決してくれるので、お金と時間をかけてまでマッサージやら整体やらに通う必要はなくなった。本当にありがたいことだと思う。
ついでに、不得意な開脚も、年々角度が大きくなって、今は150度くらいには広がった。上半身も床にぺったりとつけられるようになった。血圧も・・最盛期?には上が180とか、結構恐ろしい数字をたたき出していたけど、今は高くても130くらい。平均して120をキープしている。
ヨガの威力はすごい。ともかくやったら体が答えを出してくれる。それに尽きる。
B-lifeのレッスンの中でよく自分がやっている動画をいくつか、紹介します。
「ザ・藥」と言いたいくらい、肩甲骨と腰回りの凝りに効いてくる感じが好きです。
ちょっと頑張れる朝はこれをやっています。少し筋トレ的な要素もあるので、終わるころには汗をかきます。
何だか全身の巡りが悪いな、と思う時に。満遍なく全身のリンパや血行が促進される気がします。